2021/06/17

惡の華

変態なんかじゃない━━"変態じゃなくなる"ではなく"変態じゃなかった"ということ、それは観客が最初からずっと分かっていたことだと思うけど、春日くん自身が(なにかを手放す感覚を持ちながら)実感する映画ということだろう。「自身が実感する」ことこそが"成長する"ということであるし、思春期を描くというのはそれを撮るということだ。と思う。

2021/06/13

劇団きのこ牛乳「はらたけ科」Bプログラム『珍しくよく喋ったり哀しいことも起こってないよ』

私はたしか2018年、2017年か?2018年のような気がする、2018年ということにしよう。2018年だ。2018年にきのこ牛乳のオムニバス公演を観て、とても面白く思った。たしか2回行った。それはたしか2回観なよと言われたというのもある。ともかく2回観ている。
それ以来観に行ってなかったが、今回は菊地穂波さんが新作の脚本を提供した作品があるというので、私は彼のファンであるので、面白かったよなきのこ牛乳とか思いながらひさしぶりに観劇した。
ここまで書いていて、この文章を書くことが全然気乗りしないしなんかもうめんどくさいという気持ちが濃くなってきた。まだこんなに序盤なのに。
Bプログラムに行ったので二本立てのそのどちらもについて書こうかなと思っていたが、ダメだ。全然書いていて楽しくない。とりあえず穂波さんが書いた「珍しく〜」の方だけにとどめる。
私は穂波さんとはダチンコだが、ダチンコであることは全く関係なく菊地穂波のファンでもある。ときどき書いたり言ったりするが、菊地穂波の作品を目にする度に「演劇をやっていたら心が折れて辞めてしまうだろう」と思う。面白くて。それに、「珍しく〜」を書いた頃の穂波さんとは多分まだ出会ってなくて、だからダチンコである穂波さんではなく純然たる菊地穂波であるとも言える。
前置きは終わりにして感想に入るが端的に言って最悪だった。もう2度とこんな体験をしたくないしもしも私が菊地穂波の立場で、つまりあんなふうに自分の書いた脚本を扱われたのならたちまち大猿になって暴れてしまうだろう。脚本は面白かった。脚本は面白いのに(脚本を読解しそれを俳優の身体を通して伝えることを一旦演出とすると)演出が最悪だった。もしかすると面白く観劇した方もいるのかもしれないのでそういう方の感想を否定したくはないという理由から具体的な箇所を言及するのはやめといてやるが、絶対にこういうト書きや指示は菊地穂波は書かないであろう箇所が今パッと思い出すだけでも二箇所ある。わかるだろ。観た人なら。作った人なら。なんであんなことをするんだ。どうしてあんなに、作家というものに、もっと言えばテキストというものに、一切の敬意を払わずに演出なんて行為を行えるんだ。アレンジをすることや改変をすることそれ自体を否定しているわけではない。そういうものはテキストに対する 抽象的に言えば敬意/具体的に言えば読解 を前提にしていると言っている。それが致命的に欠如していると言っているんだ。「敬意も払ってるし読解もしている」と言うなら重傷で、やったつもりでも結果として出来てないからもう2度と他人を巻き込んで悲しみの絨毯爆撃みたいなことはしない方がいいっていうかするな。
菊地穂波さん自身が観劇した上で、私が論うような怒りと悲しみの混合液みたいな感情を微塵も感じていなくて、「面白かった!」「私のテキストを輝かせてくれてありがとう」と心から思えるなら私は菊地穂波への信頼を、失うとまでは言わずともその多くを欠かしてしまうかもしれない。言い換えれば、そんなこと絶対にあり得ないくらい最悪だったといってるんだ。
実際にキレるかどうかはわからないけど多分キレないだろう。原稿料を貰ってシナリオを書くというのは、仕事というのは、きっとそういうものだから。脚本に対する対価を貰っている以上、仕方ない。権利がないかもしれない。チケット代をきっちり払ってよかった。チケット代を払うということは私が「客である」つまりこういう事を書く権利があるということだ。ちなみに野暮な事を申し上げると、「金を返せ」とか「菊地氏に謝れ!」とかは思わない。当たり前だがそういうことではない。面白い脚本を稚拙な演出をして最悪になった演劇を観て最悪な気持ちになった。それだけだ。ネガキャンではない。感想文である。ご了承頂けることを願う。




追記:
当エントリーはめのんが「ゴテンバサノバザール」という企画をしている(そして現在♯2を現状開催している)という事に多いに起因している。"自分のテキストを他人に託す"という企画であるが、"他人のテキストに取り組む"という企画に参加者の全員が応答をしてくれたという強い実感と感動があった。そういう実感と感動を受けた身として、そこに反する(と感じてしまった)作品を観た自分が無言ないし看過することは矜持として出来なかった。これはゴテンバサノバザール参加者・そして視聴してくださっている皆さんへの私信である。