2025/11/24

長野・うえだ城下町映画祭2025

 うえだ城下町2025 自主制作映画コンテストにて『サンタクロースたちの休暇』が【古厩智之賞】を受賞しました。

映画祭関係者の皆様、ご来場いただいた皆様、誠にありがとうございました。そしていつもながらにスタッフおよびキャストの皆様、ありがとうございます。皆様のおかげです。


うえだ城下町映画祭は、"あのうえだ城下町映画祭"という言葉に冠されるような、自主映画をやっている者なら誰しもが抱く憧れもさることながら、審査員長が古厩智之監督であるという点で個人的に強い思い入れがありました。


今より私がずっと未熟で、「おもしろい映画つくりたい」という気持ちがありながら、おもしろい映画の作り方が全然わからずただ漫然と映画を撮っていて、賞に応募してみたり友達に観てもらったりはしても、だから何がどうこうということもなく、焦りと不安が肥大化していった頃。それは賞レースがどうこうではなく「おもしろく作るってなんだよどうしたらいいんだよ」という焦りと不安です。


そんな頃、古厩監督の映画を観て、ものすごい衝撃を受けました。

たとえば適切な脚本の書き方、適切なカメラポジション、それらによる1カット1カットを適切に繋ぐということ。

そういった、観念的な「おもしろい」作り方というより実際の具体例としての「おもしろい」、極端にいえば「正しい」映画の作法のようなものがしめされていたのです。

 立て続けに観てその都度、ひとつひとつのシーンに、カットに、まるで作品を通して古厩監督が自分に「演出ていうのは、たとえばこんなふうにやるんだよ」と丁寧に教えてくれているのではないかという錯覚すら覚えました。

こうやるんだ。まだ自分にはできないけど、映画ってこうやって組み立てるんだ。と、混迷の底にいた私は本当に目の前に光がさすような思いがありました。


2019年。『のぼる小寺さん』を下高井戸シネマで観たとき、ラストシーンへさしかかって、「あぁ、この瞬間にもし暗転してそのまま終わったらば凄すぎるんだけど、商業映画はここで終われないよな」と思った瞬間、画面が暗転してCHAIの曲が流れ出したのです。私は、比喩ではなく電流が身体を流れて涙が突発的に溢れこぼれ、「いま死ぬんだ!いまこの瞬間おれは死ぬんだ!!」と感動したのを覚えています。

仲間たちをさそって池袋新文芸坐での上映にも行き、今度は全員で一斉におなじく電流を浴び、全員泣きながら席を立てなくなるという経験もしました。

2019年に公開されたすべての映画のトップは『のぼる小寺さん』であり、数々の天才・巨匠といわれる監督・また自分が敬愛し仰ぎ見る監督というのは何人もいます。しかし私が「自分の映画をつくるために最も勉強した、自分もこんなふうに映画を作れるようになりたい憧れの監督」は古厩智之監督なのです。


だから審査員長が古厩監督であるうえだ城下町映画祭には、ある時期から毎回応募していました。落選のたび「まだダメか」「まだ勉強が足りないか」と落ち込み、都度反省し、次はどうやったら……と試行錯誤する、数えるに情けなさの伴うゆえ数えない何年もがあって、今年ようやく入選17本のうちに決まった時は、ようやく認めてもらえるレベルになった、自分の積み重ねてきた勉強が間違ってなかったことへの安心がありました。


コンペティションはもう運だと割り切っているので、今回の映画祭は古厩監督にお会いして、自分がいかに尊敬して憧れて感謝していて、フィルマークスで他のどのレビューより長文を書いているかを伝えられれば満足と思っていました。

交流会で、古厩監督にふるえながら名乗った際、「あー!サンタクロースの!おもしろかったよ!オレ3回見たよ3回!」と言われた瞬間、私の身体にはまたあの電流が流れました。それから「あそこがいいね」「あれが素敵ですねぇ」とお褒めの言葉をいただき、私はその間はずっと涙を堪えながら全言葉を記憶することに集中し、それから堰を切ったように上記の尊敬感謝愛を伝えました。

「無冠でも関係なし、大満足」と思いました。


授賞式の古厩智之賞発表で自分の名前が呼ばれてからは、ずっと泣いていたので、頭が真っ白であり、ゆえに、史上稀に見る「大人の男性が号泣しながら財布を落とした話をする」スピーチをして、不愉快に思われた方がいらっしゃったらすみません。


でもさぁ、自分がずっと尊敬して、「自分もこうなりたい」と憧れていた相手が、自分を一番好きだと選んでくれたら、人は号泣するし、あたま爆死するんですよ。もうしょうがないよ。


「夢が叶う」とか、そんな言葉があって、そして実際そういうことが起きたりは、する。時々。

でも今回のことは、夢にも思ったことがなくて、だから、嬉しい とは少し違う、まだ字引きに掲載のない感動なんだ。


私があたま爆死しながらスピーチで話した「世にもバカみたいな理由で財布を落とした話」は、「映画をやるしかない」という結論に着地する話。だけど、もしも財布を落とさなくても、私はこれからも映画をつくるしかない。大好きな人に、一作品だけでも一番好きだよと言われて、御自身の名前を頭に冠してもらったのだから。まだ全然背中は遠くて見えない。だけどこの道のずっと先から、大好きな人にこっちを振り返ってもらった。名前を呼ばれたのだ。歩みとめず、追いかけるしかないだろう。

大阪・十三下町映画祭2025

『サンタクロースたちの休暇』、十三下町映画祭2025にて二日間の上映を経て、【シアターセブンナナゲイ賞】を受賞しました。

映画祭関係者の皆様、劇場スタッフの皆様、ご鑑賞いただいた皆様、そしてスタッフおよびキャストの皆様のお力の賜物です。本当にありがとうございました。


初めて訪れた大阪でしたが、とてもほかほかした街で、何かとくべつ観光をしたわけではないのにそれでもすごくあたたかかったです。マジ超楽しかった。


最高の街、十三!

最高の映画館、シアターセブン!


また帰ってきます。

また来るではなく、"帰ってくる"という表現を使います。

2025/10/23

「山河図のホラー映画2025」クラウドファンディング

 


制作中の山河図新作ホラー映画2025のクラウドファンディングを2025年10月23日20時より11月28日まで実施いたします。支援という形での恐怖への関与、宜しくお願いいたします。

*ご支援でタイトルが分かります。

▶︎プロジェクトページ https://motion-gallery.net/projects/sangazu_horror2025 (2025.10.23.20:00~)

▶︎オフショット映像サンプル



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『山河図のホラー映画2025』 出演|木村美月 つぐみ 実侑 佐藤暉 中村ボリ 坂本ヤマト 桂弘 キムライヅミ 原作|菊地穂波(排気口) 脚本|菊地穂波 澁谷桂一 監督|澁谷桂一

2025/10/20

うえだ城下町映画祭2025入選



うえだ城下町映画祭第23回自主制作映画コンテストに、シャーレが制作した映画『サンタクロースたちの休暇』が入選しました。

11月22日〜23日に犀の角にて上映があります!


2025/08/29

十三下町映画祭2025入選



十三下町映画祭2025に、シャーレが制作した映画『サンタクロースたちの休暇』が入選しました。

11月7日〜9日にシアターセブンにて上映があります!


2025/07/14

『パリ杉並区』第二話「ブランコはブランコである」

 




【出演】倉里晴 平岡唯君

【企画】山河図  【制作】シャーレ

【監督脚本撮影照明録音編集】澁谷桂一

2025/05/13

『パリ杉並区』第一話「名探偵登場」



【出演】倉里晴 平岡唯君

【スペシャルサンクス】坂本ヤマト

【企画】山河図  【制作】シャーレ

【監督脚本撮影照明録音編集】澁谷桂一


2025/05/06

同人誌「三月倶楽部」創刊号

文学フリマ40で販売される同人誌「三月倶楽部」創刊号へ、山河図も小説寄稿にて参加しています。

【山河図の小説】
・澁谷桂一『ラルクアンシエル』 
・澁谷桂二『山河図』
・澁谷桂三『パンダさんパワーMAX!』
・澁谷桂四『Ⅲ月記~おちゃのじかんにきた李徴~』

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「三月倶楽部」創刊号

参加者:
大内彩加|金内健樹|菊地穂波|木村美月|金田一央紀|倉里晴|黒澤多生|椎名慧都|しにょ|澁谷桂一〜四|須貝英|内藤ゆき|中村亮太|藤井千咲子|星乃千鶴|山崎元晴|山中志歩|和田健


文学フリマ東京40にて販売

日時:2025年5月11日
会場:東京ビッグサイト南3-4ホール
ブース:い-09  三月倶楽部

2025/03/03

『金曜日から』の思い出

『金曜日から』初演の稽古期間おそらく終盤頃だったかにタクシーで菊地穂波さんと相席して家路についた日がある。徒歩に強い価値を見いだし、のちに〈夜風派〉と名乗りすら挙げる我々であるから、帰途にあたりタクシー乗車を選んだことから顧みれば私どもの他にも何人かがいたんじゃないかと推測するが思い出せない。

 暗い車内で私たちがどんな話をしたのかというのも記憶に鮮明ではない。私は初演において〈夫〉という役を任されたのだが、二場の終わりに見せ場を持つ夫とその妻である〈田辺さん〉の家庭内での関係性について、というのを、当の二場終わりの台詞のいちいちをあらためながら意見した。具体的にどんなことを意見したのかについては思い出せない。あの頃はまだ新型コロナウイルスへの警戒濃く残る時世であったから、ただでさえ暗い車内のなかでともにマスクをした私たちの表情は稽古疲れの残滓もあいまってその心情を読み取るに難く、私が、もしくは穂波さんが、どんなことを考えていたのかは分からない。


『金曜日から』初演は当初の二〇二一年五月の公演予定がたしか新型コロナウイルスの影響で延期の憂き目に遭い、夏の『午睡荘園』を挟んで同年一二月にようやく上演された。主に台詞なんて覚えられるわけないだろという理由から普段俳優なんてしない私が穂波さんから「自分の企画公演に出演してほしい」と言われた際に「台詞覚えられないんだからできるわけないだろ」とグスり続けたにも関わらず懐柔されてしまった経緯を私は思い出せない。たしか出演にあたり、幾つか条件を出したと思う。それはたとえば〈自分以外に演劇未経験者を複数出す〉とか〈二〇二一年三月までに初稿を書き上げる〉とかだった気がするのだけど、顧みればそのどれも果たされていないのでじゃあどうして出演することになったのかというのがやっぱり思い出せない。ただ、〈組織集団と個人〉というテーマに発して姉妹作品のような『午睡荘園』と『金曜日から』を書くにあたり、穂波さんは私のグズリを突破するだけの熱量を持っていたということか。


 夏の『午睡荘園』本番前日、私と穂波さんはバスで家路についたのだが、ゲネプロおよびその撮影の疲れを市営の鉄製揺籠で癒やすようにして、ともども眠ってしまった。目が覚めると終点で、揺籠は私たちが降りるべき駅を通過していた。仮眠でいくぶんか元気になったのと、スマホの地図で現在地をあらためれば家までの道程はほぼ直進で済むということがわかったのもあり、夏夜の一時間弱を私たちは歩いた。どんなことを話したのかは思い出せない。


 あれから四年の経つあいだ、呑んだ帰りに夜道を連れだって歩く時々に穂波さんがあの頃の話を出すことがある。そんなときの穂波さんは大人が子どもの頃を懐かしむというよりもむしろ小さい子ども自身がてのひらにつつんだ宝物をひらいて見せてくれるときのような印象を私に与える。

 このたびの年の暮れだったか明けだったかにもこの話があった。ついで穂波さんは『金曜日から』再演にあたり、初演を再上演するというのでは意味がない、かつての公演とこんどの公演のどちらにも失礼のないかたちにしたいということ、そのために且つそれゆえに難儀しているというようなことを言った。

「再演だからって楽できるわけじゃなかったですねえ」


〈懐かしむ〉というのはなんて甘美な誘いか。かつて起きた出来事のいちいちをたしかめ、愛で、まるで現在のなかで過去を生きるということは。

 だけど私はいま「思い出」という言葉をこの文章の題に冠しながら、かつての出来事が思い出せないということばかりを思い出している。そして不思議なことに、この形骸化された思い出バナシを私はなぜだか悪しからず感じる。私たちの〈かつての出来事〉は、内容こそ忘れてしまったけど私にとっても宝物だ。それは私のてのひらにつつまれながら指のすき間から夜道を照らしている。

 おそらくは懐かしさのともなわないかたちで上演されるこのたびの『金曜日から』が一体どんな作品なのか、思い出すどころかまだ知らない私は、それでもとってもとっても楽しみ。また酒呑んで歩こう。





排気口公演『金曜日から』


出演|佐藤暉 中村ボリ 坂本ヤマト 桂弘 神愛莉 大久保佑南 宮地あゆみ 関谷芙雪 丑三宙 安藤るい 成瀬清春


作・演出|菊地穂波


日時| 2025年3月

5日19:30/6日15:00 19:30/7日15:00 19:30/8日15:00 19:30/9日13:00 17:30


料金|予約3500円/当日4000円 


会場|千本桜ホール


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